
DataverseはSharePointリストよりはるかに強力なデータソースですが、利用にはPower Apps Premiumライセンスが必要です。SharePointアプリと同じ感覚で導入しようとすると、ライセンスの壁にぶつかります。
SharePointアプリとDataverseアプリ。ライセンスの根本的な違い
まず前提として、Power Appsのライセンスには大きく2種類あります。Microsoft 365ライセンス(M365やOffice 365のサブスクリプション)に含まれているものと、追加で契約が必要なPower Apps Premiumです。
SharePointリストをデータソースにしたアプリは、Microsoft 365ライセンスの範囲内で動かすことができます。つまり多くの会社では、社員がすでにM365アカウントを持っているなら、追加コストゼロでSharePointアプリを作って使ってもらえます。これがSharePointが市民開発の定番データソースになっている大きな理由のひとつです。
一方、Dataverseをデータソースにしたアプリは話が変わります。アプリをビルド(作成)すること自体はPremiumなしでも可能です。ただし、そのアプリを他のユーザーと共有して実際に使ってもらうためには、利用者全員にPower Apps Premiumライセンスが必要になります。

この仕組みを整理すると次のようになります。
| 項目 | SharePointリストアプリ | Dataverseアプリ |
|---|---|---|
| アプリのビルド(作成) | M365ライセンスで可能 | M365ライセンスで可能 |
| 他ユーザーへの共有・利用 | M365ライセンスのみでOK | 利用者全員にPower Apps Premiumが必要 |
| E5で利用可能か | 可能 | 不可(追加契約が必要) |
| 追加コストの目安 | なし | 約20ドル/ユーザー/月(2024年時点) |
SharePointリストとDataverseの機能面での違いについてはSharePointリストとMicrosoft Listsの違いでも解説しています。ライセンスだけでなく、機能面での使い分けも参考にしてください。
E5ライセンスでも対象外
よく受ける質問のひとつが、「うちの会社はMicrosoft 365 E5を契約しているからDataverseも使えますよね?」というものです。残念ながら、これは正確ではありません。
E5はMicrosoft 365の最上位プランで、高度なセキュリティ機能や音声通話機能なども含まれる充実したプランです。しかし、Power Apps Premiumは含まれていません。E1でもE3でもE5でも、Power Apps Premiumは別途契約が必要です。
個人的にも社内でこの説明をするたびに驚かれます。高いライセンス料を払っているのにさらに追加が必要なのかと。気持ちはよくわかりますが、これはMicrosoftのライセンス構造上そういうものなので、そういうものだと割り切って考えるしかない部分です。
導入前に試算してみる
Power Apps Premiumは2024年時点で1ユーザーあたり月額約20ドル(日本円で概算3,000円前後)です。
たとえば10人のチームで社内ツールを使う場合、月3万円程度の追加コストが発生します。SharePointアプリなら追加コストゼロだったことを考えると、この差は無視できません。50人が使うアプリになれば月15万円規模になります。
Dataverseを導入する前に、利用者の人数と月額コストをざっと試算してから意思決定することをおすすめします。小規模なチーム内ツールなら費用対効果が見えやすいですが、全社展開を考えているなら、先に情報システム部門や経営層との調整が必要になる場合もあります。
Dataverseだけじゃない、Premiumが必要なデータソース
Premium扱いになるのはDataverseだけではありません。Power Appsで接続できるデータソースの中には、Premiumコネクターに分類されるものが多数あります。代表的なものを挙げると、SQL Server(オンプレミス・Azure SQL)、Salesforce、ServiceNow、Dynamics 365などです。
これらをデータソースにしたアプリも、利用者にPower Apps Premiumが必要です。SharePointやExcel、Teams、OneDriveはStandardコネクターなので追加コストはかかりませんが、ひとつ踏み込んだデータソースを使う場合は必ずライセンスを確認してください。
Power Appsのライセンス全体の仕組みについてはPower Appsのライセンスをわかりやすく解説に詳しくまとめています。無料で使える範囲と有料プランの違いも合わせて確認しておきましょう。
model-driven appsとPower Pagesも同様
Dataverseを前提としたアプリの種類として、model-driven appsというものがあります。Canvas appがUIを自由に設計できるのに対して、model-driven appsはDataverseのテーブル構造に沿って自動的に画面が生成されるタイプのアプリです。Excelのフォームビューのような使い勝手で、設定次第で素早くデータ管理画面を作れます。
model-driven appsはDataverseなしでは動かない仕組みなので、利用者にPower Apps Premiumが必要であることはCanvas appと同様です。
Power Pages(外部向けWebサイトをDataverse連携で作るサービス)についても、ライセンス体系は別途確認が必要です。こちらは用途が社外向けになるため、ライセンス構造がより複雑になります。
それでもDataverseを選ぶ理由
ここまでコストとライセンスの話ばかりしてきましたが、Dataverseにはそのコストに見合うだけの価値があります。
SharePointリストにはないテーブル間のリレーション(ルックアップ列)、タイムゾーン対応の日付管理、GUIDによる堅牢な主キー設計、こうした本格的なデータベース機能を、ノーコードのPower Appsから扱えるのはDataverseだけです。大量のデータや複数テーブルを組み合わせた複雑な業務ロジックが必要なアプリを作るなら、SharePointリストには限界があります。
実際に私が社内でDataverseを使い始めたのは、SharePointリストだけではどうしても実現できない要件が出てきたからです。最初はライセンスコストを聞いて一歩引きましたが、実現できる機能の幅を考えると、必要な投資だと判断しました。
データベースからアプリを作る基本的な流れはPower Appsでデータベースから簡単にアプリを作る手順でも紹介しています。Dataverseを使ったアプリ作成のイメージをつかむ参考にしてください。
まとめ
Dataverseは機能面では文句なしのデータソースですが、利用には追加のライセンスコストがかかります。ポイントを整理しておきます。
- Dataverseアプリの利用者全員にPower Apps Premiumが必要
- E5を含むM365ライセンスではカバーされない
- SQL ServerなどほかのPremiumコネクターも同様
- 導入前に人数×月額コストを試算する
コストも仕様のひとつとして正確に把握した上で、それでも必要だと判断したら導入する、その順番を踏んで進んでいきましょう。
Dataverseの全体像はDataverseをSharePoint経験者向けに完全解説にまとめています。